遅い梅雨入り

1/1

17人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ

遅い梅雨入り

私こと、千里(ちさと)は、高校三年生。 受験勉強に追われ、親友の晴菜(はるな)と、辛い勉強漬けの日々をおくっていた。 学校に行っては、授業、塾、自習を繰り返す毎日。 受験生にとっては、土日さえ自習のボーナスタイムだ。 休みなく頭に詰め込んで、消化して、問題に挑む。 最近では、もはや鳴き声のように、晴菜と口を揃えて「休暇がほしい」と話していた。 実際、私の行きたい大学の判定は、6月上旬でC判定と、安心するには微妙で、私は休むわけにはいかなかったのだ。 さて、私も晴菜も、勉学に必死で、この時は天気になど目もくれていなかったが、2024年の梅雨入りは6月下旬と、例年よりも遅い開始であった。 梅雨入りから少し経ったある日のことだ。ニュースはサハラ砂漠で連続して雨を観測したと報道した。 その後も世界各地で雨が観測され、さらに降り止むことを知らないという報道に、世界で騒がれたが、私たちは、不思議なこともあるものだ、と思いながら、ただ毎日を過ごしていた。 私はふと、数学の授業中、窓の外を眺めた。雨水が窓に張り付いて、小さい粒が引力に負け、だんだん大きくなりながら、ゆっくり下へと伝って行くのが、面白かった。 幼い頃は、よく車の窓をこうやって眺めていたなと思い出す。7月に入ってもなかなか終わらない梅雨に、ふと違和感を覚えた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加