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雨の原因
2025年2月、近くの881mにもなる山を拠点にし、その近くに私の集落は各家のイカダを漂わせることに自治会で決定された。
山頂の神社が、新しい集会場だ。初めこそ、外国人にしか見えないノアは、集落で浮いていた。しかし、だんだんノアの人の良さが、地域の人も分かってきたみたいだ。
祖父母の口添えもあり、もう今ではすっかり馴染んだ。
このころから、食料が尽きてきたので、食卓には見慣れない海藻と魚が並ぶようになった。
網で掬えば、たくさんの魚が手に入る。ただ、調味料がないのは辛かった。雨でかなり薄まった水は、塩分をほとんど感じず、煮詰めて塩を作ろうにも難しかった。祖母はかなり料理に工夫を凝らしてくれているが、正直味はイマイチだった。
少し経ったころ、ビニールハウスごとイカダに乗せた、集落共同の畑が出来上がる。野菜の自給ができるようになったのだ。ノアが一番喜んでいたのが意外だった。
そんなある日、私の部屋で、ノアとこの雨の原因について話していた。
「ノアの方舟だったりして。」
「それ、僕の名前で思いついたでしょ。
ノアの方舟というと、旧約聖書、創世記の?」
「随分詳しいね。」
「両親がクリスチャン、キリスト教徒だったから。」
それにしても、雨はずっと小雨だし、冬の割に寒くないよね。」
確かにな…。と、私は思った。
「地殻の半分は酸素、コアには水素が大量にあるっていうし、地球の中の岩から水が出てきて、それが雨になったとか?」
ノアは賢かった。科学の話で盛り上がれるのは、晴菜ぐらいだったから、私は嬉しくなった。
「でも、質量保存的にそれはありえないよね。水が湧き出している報告もないし。
宇宙空間に一番多いっていう水素が空気中の酸素と結びついたとか?その方がまだあり得そうだけど、それにしては息苦しくないな…。むしろ、この海抜で息苦しくないのは不思議な話だよ!」
「ちょっとちょっと、追いつけない…。ちさとって、もしかしてすっごくかしこいの?」
「もしかしてとは失礼な!!…とある大学の、医学部に進もうとしてた。お医者さんになるはずだったんだ。」
「マジか…。僕も賢い方ではあったと思うけど、ちさとはすごいんだね!」
実際、ノアはかなり賢い。東京の大学で理学部だったそうだ。その後も、雨の原因を長々と話していたが、世界の研究者が未だ分からないことを私たちが分かるはずもなく、答えは出なかった。
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