再会

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再会

××× 降りしきる雨。 強風が吹いているのか。バチバチと雨が窓ガラスに激しく当たる音が時折聞こえる。 ──ギシ、ギシ、 部屋に響く、ベッドの軋む音。 不規則的に強弱をつけて響く雨音とは相反し、一定のリズムを刻みながら主張するように大きく鳴り響く。 「……」 ベッド柵に、両手首を拘束した手錠が引っ掛けられ、霞んだ視界の中で上下に動くハイジの顔をぼんやりと眺めていた。 その瞳は冷たく、虚ろで深い闇色に濁っている。 ……あの作業員は、どうなったんだろう…… ハイジに後ろを貫かれながら、そんな事をぼんやりと考える。 龍と呼ばれた男が部屋から出て行った後、絵に描いた様なチンピラ風の男が二人、部屋に飛び込んできた。入るなり奴等は、倒れて動けなくなっていた作業員の取り囲むようにしてしゃがみ込む。 ゴトンッ、 ボルトクリッパーを床に投げ落とし、その様子を塞ぐようにして立ったハイジが、僕の片腕を強く掴んで引っ張り上げる。 その眼は鋭く、今もなお強く僕自身を責め立てる…… ……この瞳…… そうだ。 僕が初めてハイジと出会った、あの夜と同じだ。 ゲイが集まるパーティー会場で差し伸べられた手。意味も解らずその手を掴んで一緒に抜け出し、行き着いた先は──ラブホテル。 ベッドに組み敷かれた僕は、動揺してしまって。 『……りゅう、いち』──そう口にしてしまったせいでカッとなり、一瞬で殺意へと変わった、ハイジの眼── 「……っ!」 そんな事を思い出していたからだろうか。 ハイジの両手が、僕の首にかかる。 「さくら……殺してやるよ」 竜一が用意してくれたアパート。 そこでの生活は、僕には勿体ない程幸せだった。 竜一の為に作る料理も。掃除も洗濯も。竜一を待つ間の時間も。 竜一を出迎えて、抱き合って交わす会話も。重ねる唇も…… 全てが愛しくて、大切な時間(もの)だった…… 今までの僕には縁の無かった、居場所。 世間とは少し違うかもしれないけれど。それでも、穏やかで静かに暮らしていける、僕の大切な場所(もの)…… 竜一という、鳥籠の中で生きる。 その他なんていらない。自由なんていらない。 ……ただ、竜一の手の中で……一生を過ごせれば、それでいいと思っていた…… 「……」 冷たく見下ろす、ハイジの尖った瞳。 首に掛かるその指に、力が籠められる。 人生最後の場所が、僕をあの(地獄)から引っ張り出してくれた、ハイジの手中だなんて……皮肉すぎる。
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