フレンチ・キス

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───ハイジッ……! 「………、」 「おっと……」 飛び出そうとする僕の肩を掴み、太一が後ろに引っ張る。 「ハイジに、大人しく部屋で待ってろって言われてんだろ……?」 「………」 「まぁ、見てなよ」 二の腕を掴み、僕の背面にピタリと張り付く。 そして、肩口に寄せられる顔。 「……あれが、ハイジの仕事」 ハイジが何かを握り締め、男をカウンターに押さつけたまま腕を振り上げる。鋭く光るそれ。先の尖った金属だと直感する。 「………っ!」 それが、勢いよく振り下ろされる。 「……ぎィぃいや″ァぁあ″──ッ!!」 悲鳴とも発狂とも取れる、男の叫び声。 しかし…… 店内に響き渡る、激しい音楽や騒がしい声、その他の雑音に埋もれてしまったのか。辺りにいる人達は、全く動じていなかった。 キャハハハ…… ワァー!! ……ドゥンドゥン 激しいダンスミュージックに合わせ、体を動かす男女。サバけたお姉様達にナンパをする、若い男性陣。颯爽とドリンクを運ぶウエイター。 「………」 「ああやって、裏切った奴を制裁したり、代理で金取り立てたりしてんだよ」 耳元に寄せられた唇。 吐息が掛かり、耳裏を僅かに熱くさせる。 「………ッ、!」 周りに、気を取られすぎていた。 気付けば太一の腕が僕の胸の前に回り、パーカーのファスナーを抓んでいた。 「……今年に入ってすぐ、いきなりハイジが俺らの前に現れてよ。分裂したチームの再結成ってやつ? まぁそんな感じで、また連んでんだけどよ……」 ジジジ……とゆっくり下ろされる。 「……姫も感じてんだろ?」 「………」 その手が、半分程開けたバーカーの中に侵入し、カットソーの上から胸を弄られる。 「ハイジが、別人みてぇだってよ……」 ………止めろ。 そう叫んで突き飛ばしたいのに。身体が硬直して動かない…… 「この首輪、ハイジが付けたんだよなァ……」 その手が、胸元から黒革の首輪へと厭らしく滑り上げる。 「セックス中に、首でも絞められたか?」 太一の熱い舌が僕の耳裏を這い、嬲るようにじっとりと食む。
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