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☆
胸の中の言葉に出来ないもやもやを。
おひさまに見られたくないあれこれを。
何となく雨のせいにしてごめんね。
だけど誰だってふとした時に。
自分の中に雨の気配を感じるのです。
窓の向こうは雨降りだったりするのです。
「あれっ?どうしたの?」
今夜、彼女もその一人。
人は時々、勝手に雨を降らせます。
気象庁も知らない雨を。
そうです、一種の超能力です。
それを雨と呼ぶ事を、雨としては不満であるやもしれません。
とにかく。
恋人がいても満ち足りていても。
鳥が鳴いても猫が鳴いても。
雨が降る時は降るのです。
「えっ?そっちこそ」
今夜、彼だってその一人。
彼女と彼が出会う事は。
お互いに雨を持ち寄る事です。
単純に雨は二倍になるはず。
晴れ間はきっと遠のくでしょう。
それに、そこに虹が出るとは限りません。
だからこうして手を取り合って。
だから傘の下、身を寄せ合って。
時には雨に文句を言って。
時には雨と共に歌って。
雨上がりにはきっとまた。
雨の気配を感じていたい。
ああ、どうして人間とは、雨より太陽よりわがままに設計されてしまったのだろう。
設計者がいるなら名乗り出て欲しい。
最高の賛辞を贈りたい。
ごめんね、雨。
そしてありがとう。大好きだよ。
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