雨と雨とを持ち寄って

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どうして朝も夜も昼も勝手にやって来るの。 どうして降水確率10%なのに今夜は雨が勝ったの。 圧倒的支持率の90%で負けた晴れはどこで記者会見を開いているの。 ねえ、どうして思い通りにならない予感だけが思い通りになるの。 だって、いつもそうじゃない。 やっと出来た彼氏にスマホでおやすみをしたのに、目が覚めた午前三時前。 目を覚まさせたのは自分の涙。 なぜ私は夢を見ながら泣いていたのだろう。 夢から覚める程に泣いてしまったのだろう。 涙はそうそう流すもんじゃない。 だって誰かに見られたならどうするの。 その誰かは例外なく困ってしまうのだから。 例えそれがあくびの後や花粉症のせいであっても。 それなのに。 涙まで流してしまったのに。 どんな夢を見たのかさえ覚えていないのはなぜ。 夢よ、勝ち逃げはずるいじゃん。 起きたからにはリベンジしたいのに。 あんたなんか大した内容じゃなかったと言ってやりたいのに。ちゃんと原作通りに作らなかったに違いないって。 だけど人は何にだって泣ける時は泣ける。 猫が鳴いても鳥が鳴いても泣ける時は泣ける。 我慢の末にカロリーを口にしても。 タイムラインで誰かが懐かしいアニソンを踊っていても。 朝が昼が夜が勝手にやって来ても。 今見ていた夢を思い出せなくても。 ただそれだけで理由もなく。 泣ける時はどうしようもなく泣けるのだ。 感情とはなんといいかげんなのだろう。 一度設計図を見せて欲しい。 きっと「人間なんてこんな感じじゃね?」と適当に書かれているはずだ。 そんな出来損ないを「おお、人間らしい」と誤解しているはずだ。 とにかく目が覚めた私は思うままにベッドから起きた。だって起きないと仕方ない。 明日も仕事だ、それがなんだ。 だからどうしたそんなの知らない。 外は雨が降っている、それがなんだ。 だからどうしたそんなの知らない。 せめて自分の体くらいは思い通りにしてあげたい。 傘も開いて欲しいって言ってるじゃん!
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