雨だけが

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「ねえ、君、いつもここに来てるよね」 「えっ?ああ、僕のこと視えてるんですね」 「君もでしょ?」 「まあ」 「なんでこんなところ来るの?君が来るような場所じゃないよ」 「なんでそう思うんですか?」 「なんでって……だって君、明るそうだし」 「明るく見える人は、来ちゃいけないんですか?」 「そうじゃないけど。だってほら、今日もすごい雨だよ」 「ああ……でももう、雨上がりそう。来るのが遅かったな」 「雨上がるのが寂しそうな言い方をするね」 「寂しいですよ。雨を見てると過去を思い出せるから好きなんです。もう戻らないと」 「どういうこと?」 「雨だけが、僕とあの人を繋いでくれるから」 「あの人……?」 「はい。会えるかなって思ってここに来たけど、いないんですよね」 「……」 「戻ります」 「あ、うん」 「雨が降ったら、また来ます」 「……」 「いつから僕のことを?」 「君の世界で数えると、うーん……何年だろう」 「そうですか。もうそんな経ちましたか」 「……」 「そんな顔しないで下さい。雨が降ったらまた来ます。そしたら、雨が上がるまでお話ししましょう。あなたはとても良い人そうです」 「そんなことないよ」 「ふふ。じゃあ、さよなら」
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