20人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
5月の最終日、昨日丸一日降り続いた雨のせいで道のあちこちに大きな水溜りがある。
日向の水溜りが照りつける太陽でキラキラと乱反射している。
中学までの通学時間は20分。大きな坂を下り右折して橋を渡る。橋の下には増量した濁り水が川幅を広げて流れている。
いつもより早く家を出たせいで通学路は俺の貸切状態だった。
遥か前方、横断歩道の向こうに制服姿の女子が1人いるのが見えた。小学校も一緒だった山下育実だ。今まで一度も同じクラスになった事がないため、顔と名前は知っているものの話をした事はない。
山下育実は橋の左側に渡る為に信号待ちをして立っている。
こっちに向かって来るトラックが坂道を登りきり勢いよく下って来る。信号が黄色に変わりトラックは更に加速した。
ザーン…
橋の真ん中まで来ていた俺にもハッキリと聞こえる程の大きな音を立てて、盛大に水飛沫が上がった。
そのサーフィンが出来そうなくらいの水を山下育実は頭からモロに被っていた。
その光景はまるでスローモーションの様だった。
最初のコメントを投稿しよう!