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「フイキ、私はこうなって良かったんだと思ってるんです」
急にしんみりとした声音でスヤが言う。
「え、どういうことだい」
「フイキと一緒になるのが私の希望だったことに、気づいていなかったんですか」
にわかに稲妻が走った。漆黒の視界が一変し、スヤの顔をものすごく照らし出した。
「どういうこと」
言いかけたフイキの視界からスヤが消えた。川に吞まれたのだと気づいてフイキは慌てて駆け寄る。
川の流れは昼とはうって変わって速くなり、黒い水の渦になっている。
「あなたにとって良かったんです。ミオサとハオルを大事にしてね。それから」
そこで声は途絶えた。フイキは漆黒の急流に飛び込んだ。スヤの気配はすでに消えている。
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