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ぽつ、ぽつ、ぽつ、ぽつ、ぽつ、ぽつ、ぽつ、ぽつ、
「ん〜〜〜〜と・・・雨止んだみたいだな・・・」
雨宿りの、団地の階段奥から這い出た野良猫のアルは軽く伸びをすると、雨に濡れたアスファルトの上をチャプチャプと歩いた。
「雨を弾く脚の肉球の感触・・・そして、雨上がりの雲間の青空・・・そして虹・・・
感触・・・?青空・・・?虹・・・?」
ふと野良猫のアルは、ひたと脚を止めた。
「この感触、この感情、あの頃だ。あの頃も・・・そうだ。あの頃・・・!!」
野良猫のアルは、目の前に見覚えのある子猫の姿を見掛けた。
子猫は、まるでアルの子猫時代の生き写し・・・子猫自体がアルの子猫時代の姿だったのだ。
子猫時代のアルの幻想が、野良猫になったアルをじっと見詰めていたのだ。
その幻想は「にゃ〜ん。」とひと啼きすると、するするとその場を去っていった。
「あっ!!そこの子猫待てぇーーー!!」
野良猫のアルは、目の前に現れた子猫を追いかけて雨上がりのアスファルトをバシャバシャと走った。
雨上がりの雲間の青空から差し込む、陽の光が駆けていくアルの子猫時代の幻想の姿を映し出したとたん、野良猫のアルの脳裏に沸々と子猫時代の思い出が次々と蘇ってきた。
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