3#雨上がりに蘇る記憶

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 ざぁーーーーーーーーーーー!!!!!    激しく降り続く豪雨の中、トボトボと一匹のずぶ濡れの子猫が歩いていた。  「親猫は車に轢かれて死んだ・・・兄妹は人間に虐められて皆死んだ・・・  そして、俺ひとり・・・俺ひとりだけが生き残った・・・    嗚呼・・・何で俺だけが生きてるんだ!!  死なせてくれ・・・!!  誰か俺を死なせてくれ・・・!!  このままいっそ、この雨にうたれてこのままいっそ・・・死んでしまいたい・・・」  子猫のアルは、救いようが無い激しい絶望に駆られていた。  もう生きる気力もなく、ただ死に場所を探してガリガリに痩せこけた身体が降り止まぬ豪雨で重くなるのを、ブルブル震える四足で支えてゆっくり、ゆっくりと雨の中を歩いた。  ザァーーーーーーーーーーーッ!!  子猫のアルは傘をさして通りすがる人間達を凝視して、  「俺がこうなったのは、あんな奴らのせいだ!!」  とボソッと呟き、キッと雨が激しく降り続く鉛色の空を睨みつけた。   ザァーーーーーーーーーーーッ!!  ふと子猫のアルは目の前に、放置廃車があるのを見つけた。  「疲れた・・・この中で休もう。」  子猫のアルは、放置廃車の割れた窓から潜って車内に入ろうとした。  「痛っー!!」  子猫のアルの脇腹を割れた窓の破片がえぐり、赤い鮮血が滲んだ。  「とことんついてないな・・・俺。」  これが、生まれて始めて身体に付いた傷だった。  子猫のアルは傷ついた脇腹をかばいながら、かび臭く腐った座席に寝そべった、    ザァーーーーーーーーーッ!!  相変わらず降り止まぬ雨。  そのうち、ウトウトしてそのまま眠りこけてしまった。    暫くして、子猫のアルは目を覚まして外を見ると雨は止んでいた。  廃車の割れた窓から這い出て外に出て、子猫のアルが空を見上げると・・・  「母ちゃん!父ちゃん!そして俺の兄妹!!」  子猫のアルの目から大粒の涙が溢れた。  雨上がりの雲間の隙間から澄み切った青空が拡がり、そこから差し込んでくる無数のの光の束が、死んだ両親や兄妹の幻想を映し出し、其々彼方の空にかかる虹の橋を駆けていったのを、子猫のアルは涙目で見詰めてこう大声で叫んだ。  「父ちゃん!母ちゃん!そして俺の兄妹!!俺は独りで生き抜いていくからな!!  どんな試練が起きても、俺は誰も頼らずに独りで生き抜くからな!!  皆・・・虹の向こうで何時までも見守ってくれ・・・!!」
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