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   新しい眼鏡を二人で掛けて薬草マーケット散策を再開する。  とっておきだと見せてもらったのは、薬草鳥の薬草だった。魔法鉢に、宝石のように輝く若草色の薬草がたった一本だけ生えている。本当に美しいものを見ると言葉も出ないのだと初めて知り、レオナード様と時間を忘れて見つめていた。    ◇  薬草マーケットから一週間。薬草鳥の薬草の虜になった私は、放課後になるとレオナード様から薬草鳥の言葉を教わっていた。レオナード様が薬草笛のボトルネジを回すと、キュッと鳥の鳴き声が響く。 「アイリーン、なんて言ったかわかる?」 「今のは、おはようです!」 「うん、正解。短期間でずいぶん分かるようになったね」 「レオナード様の魔道具のおかげです」  初日にあまりに分からなくて落ち込んでいたら、薬草鳥の声と解説してくれる魔道具を渡された。毎日欠かさず聞いているので、最近は簡単な挨拶や危険を知らせる言葉がわかるようになってきた気がする。  薬草鳥の薬草は、生えている時は宝石のように輝いているけれど、採取するとただの薬草になってしまう。薬草マーケットではたった一本だったけれど、原生地には一面に生えていると聞いて身体が震えるほど興奮した。光り輝く薬草をもう一度見たくて、自分の足で見に行くことを目標にしている。 「アイリーン、次は案内をお願いするのを鳴らす練習をしよう」 「はい……っ!」
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