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  ◇  レオナード様と薬草カフェに行ってから半年。今では薬草鳥の言葉もかなり分かるようになった。ドワーフの鍛冶屋で頼んでいた採取ナイフも出来上がり、今度の連休にレオナード様と薬草採取に行く約束をしている。 「今日もレオナード様は休み……」  ロンダンの(つぼみ)を見つめて、ため息をこぼす。  王太子の公務で忙しいレオナード様は、最近アカデミーを休むことが多い。仕方ないと思うのに、気づくと眼鏡チェーンのサファイアを指先で撫でてしまう。   「寂しい……」  アカデミーで出会ってからいつも傍にいてくれていた。婚約破棄のことを忘れるくらい魔法薬に夢中になれたのは、レオナード様の優しさがあったから。  青色と銀色を選んでしまうのも、鏡の前で長い時間身だしなみを整えるのも、会えないと寂しいと思うのも──気付いてしまえば、この気持ちに名前をつけることはあまりにも簡単で。  トクン、と鼓動が跳ねる胸に手を当てる。  私は、レオナード様のことが好き──…   「アイリーン」  名前を呼ばれて振り向き、驚いた。   「エリック殿下……なぜここに……?」  なぜ他国であるクラウト王国のアカデミーにエリック殿下がいるのか不思議で疑問がこぼれる。 「なっ、お前、本当にアイリーンなのか……っ?!」  エリック殿下が気持ち悪いくらい私をじろじろ見てから、下卑た笑みを浮かべた。 「ふうん、なるほど。わたしに振られ反省したようだな。見た目を磨いて、わたしに振り向いてもらえるように頑張ってたってわけか。可愛いところもあるじゃないか」  意味が分からないことを並び立て、ねっとりした視線を向けられるのが不快でたまらない。 「喜べ! お前を迎えに来てやったんだ。婚約破棄は撤回してやろう」 「…………はい?」    一方的に婚約破棄をしておいて、今度は勝手に撤回するという発言が信じられない。 「嬉しいだろう? お前と婚約解消してマチルダと婚約をしたまではよかったが、王子妃教育が進まない。このままではマチルダと結婚できなくて困る」  エリック殿下の言葉を醒めた思いで聞く。 「このままでは駄目だとマチルダと考えた。お前を正妃にして政務を全て任せ、マチルダを愛妾にすれば丸く収まると思ったが……今のお前ならマチルダと一緒に愛してやろう──アイリーン、すぐにサルーテ国に戻って手続きだ」  信じられないくらい失礼な提案を得意げに披露するエリック殿下に、怒りで身体が震える。
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