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「お断りします」 「すぐに戻るぞ…………は? 今、なんと言った?」 「お断りします、と。私と殿下の婚約は既に破棄されております。私はクラウト王国でこれからも魔法薬を学びたいのです」  まっすぐにエリック殿下を見据えた。もうエリック殿下と私の繋がりは切れているし、縁を結びなおすなんて絶対にしたくない。 「はあああ? 魔法薬なんかよりわたしと結婚するほうがいいに決まってるだろう! これ以上怒らせるな、さっさと帰るぞ」 「殿下が婚約破棄を決めたのです。王族が一度口にしたことを簡単に撤回すべきではありません」 「……本当に融通の効かない女だな! わたしの言うことを大人しく聞けばいいんだっ!」  目を怒りでギラギラさせたエリック殿下が腕を掴もうと動くのを見て、咄嗟に避けた。 「なっ、お前……っ!!」 「っ!」  エリック殿下の顔がこれでもかと紅潮し、腕が高く上がる。目をつむって叩かれる衝撃を待つ。 「俺の大切な(つがい)に、乱暴はやめてもらおうか」 「なんだ貴様は──! 離せ、わたしを誰だと思っている。外交問題にしてもいいんだぞっ!」  驚いて目をあけると、レオナード様がエリック殿下の背後から腕を掴んでいた。それから、暴れるエリック殿下の腕を勢いよく離して、私を庇うようにレオナード様が隣に立った。 「っ、レオナード様、……あ、ありがとうございます」  レオナード様の姿を見たら緊張の糸が切れて身体がかたかた震えていく。 「遅くなってすまない。アイリーン、もう大丈夫だから安心して」  優しく体を抱き寄せられて、背中をそっと撫でられる。
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