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「これで二度とアイリーンの前に現れないだろう」  レオナード様に色々聞きたいはずなのに、美しい銀色のドラゴンにただ見惚れてしまう。 「……ドラゴンの姿は怖いか?」 「レオナード様なのに怖いわけありません……っ!」  大きく首を横に振るとドラゴンが柔らかく微笑む。姿が違うのに表情がレオナード様らしくて、胸がきゅうと掴まれた。 「助けてくださってありがとうございました。あ、あの……それで、先ほど……その、私のことを、……(つがい)と言いましたか……?」  ドラゴンの身体が輝いてレオナード様の姿に戻ると、私を甘く見つめる。 「アイリーンが好きだ。初めて会ったときからずっと好きでたまらない──アイリーンは、俺の運命の(つがい)だ」 「運命の(つがい)……?」 「人族でいう運命の赤い糸だな。ただ、俺たちドラゴンは匂いで運命の(つがい)がすぐにわかるが、人族はわからないのだろう?」  レオナード様の言葉にうなずく。 「(つがい)の分からない人族を強引に(さら)う悲劇が過去に起こり、俺たちは人族について学んだ。一緒に出掛けたり、話し合ったり、少しずつ分かりあうのだと──だから(つがい)とは告げずに、アイリーンに俺を知ってもらいたかったんだ」 「そう、だったんですね……」  レオナード様が愛おしいものを見るように目を細めると、心臓が甘く高鳴った。 「ああ。アイリーンの魔法薬に真剣に取り組む姿も、俺の言葉に恥じらって頬を染める姿も、しっかりしてるのに抜けてるところも可愛くて好きだ。アイリーンにいつも触れていたいし、その美しい瞳にはいつも俺を映していてほしい──」  甘やかなまなざしに見つめられ、続く言葉を期待するみたいに身体が熱くなっていく。 「ドラゴンは、運命の(つがい)と呼ばれるたったひとりを一生愛し抜く。アイリーン、好きだ。どうか俺と結婚してほしい」  レオナード様の言葉に心がどうしようもなく甘くなる。銀色の髪が揺れて、大きな手のひらが私の頬をやさしく包む。甘い熱にゆらめく青色の瞳に見つめられると、私の好きがあふれて止まらなくなるのが分かった。 「私もレオナード様が好きです……」  破顔したレオナード様が、私のおでこに甘いキスの音を鳴らした。  それから、(つがい)と子どもしか乗せないというドラゴン(レオナード様)の背に乗り、メディケルト公爵領におり立つ。腰を抜かしたお父様には申し訳なかったけれど、両家から祝福されて私たちの婚約はすぐに結ばれた。
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