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 ◇  今日からクラウト王国の王立アカデミーで魔法薬師の勉強がはじまる。新しい制服に袖を通し眼鏡をかけた私は、浮き立つ気持ちでアカデミーの門をくぐった。 「まあ、素晴らしいわ……っ」  華やかに咲きほこるロンダンの花に息を呑む。ドラゴンの胆のうという意味を持つロンダンは、クラウト王国のみに咲く銀色と青色のバイカラー咲きの薬草である。  美しすぎるロンダンに見惚れていたら、足音がして振り向いた。 「まさか隣国にいたとはな。どうりで探しても見つからないはずだ……」 「あの、どうかしましたか……?」  学園の制服を着た長身の青年に怖いくらいに見つめられていたので、思わず声をかける。 「いや、なんでもないよ。君は、今日からやってきた留学生だろう? よかったらアカデミーの校舎を案内しよう──俺は、レオナード・クラウトだ」  クラウト王族の象徴である銀髪に青色の瞳。私は、王太子であるレオナード様に淑女の礼を取る。 「サルーテ国のアイリーン・メディケルトと申します。本日より王立アカデミーで学ばせていただきます」 「ああ。困ったことがあれば、俺になんでも相談してくれ」  大きな手を差し出されて握手を交わすと、レオナード殿下が柔らかく微笑んだ。
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