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 畏れ多くもレオナード殿下にアカデミーを案内してもらうことになり、温室に到着した。 「わあ、ドラゴーネ草にロンドラーク! 本物を初めて見たわ……っ!」  書物で知っている薬草が目の前にあることに感動してしまう。薬草に駆け寄り観察をはじめる。 「あなたに気に入ってもらえて、とても嬉しい」 「っ! で、殿下……申し訳ありません」  珍しい薬草に夢中になって、誰に案内されていたのか忘れていた。 「駄目だな」  レオナード殿下は言葉を切ると、私の顔を不安になるくらい凝視する。魔法薬師になる夢を叶えようと留学してきたのに、サルーテ国に戻されたら困ってしまう。 「殿下ではなくレオナードと呼んでほしい。あなたには名前で呼ばれたいんだ」 「えっ……と、それは……」  私が公爵令嬢と言っても、大国のクラウト王国の王太子とはあまりに立場が違いすぎる。 「どうしても駄目だろうか……?」  あからさまにしょんぼりする姿に、罪悪感が芽生える。このまま固辞を続ける方が失礼なのかもしれないと悩んでしまう。 「あの、では、レオナード様……?」  私が名前で呼ぶと、レオナード様が嬉しそうに目を細めた。
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