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アカデミーでは魔法薬の講義や実習、それからクラウト王国の歴史と文化を学ぶ。中でも、クラウト王族がドラゴンに変化できることにとても驚いた。
育てた薬草から魔法薬を生成する手順を黒板から書き写しながら、目を細める。次からはもっと前に座ろうと決めて、眼鏡を外し目頭を軽く揉む。眼鏡を掛け直し、魔法薬の素材である薬草や道具に向き合った。
「よし……っ!」
乳鉢ですりつぶした数種類の薬草を混ぜ合わせ、熱魔法と氷魔法で温めるのと冷やすのを繰り返して粉にする。秤で計量し風魔法を使い圧縮させ錠剤にすれば魔法薬の完成となる。
すべての魔法薬を薬瓶に詰め終わり一息つくと、隣に座るレオナード様に声をかけられた。
「アイリーンできた?」
「はいっ! バッチリです!」
上手くできた魔法薬が嬉しくて笑顔で見せると、レオナード様の手が伸びてきて私の頭にぽんっと置かれた。
「「…………っ!?」」
私の肩が大きく跳ねて目を丸くすると、レオナード様も目を見開いて手を引っ込める。すぐに手が離れたのでホッとして視線を向ければ、片手で顔を覆ったレオナード様と目が合った。
「ああ──…ごめん。アイリーンがあまりにも嬉しそうに笑うから、可愛くて、つい手が伸びてしまった……ごめん」
「…………へ? えっと、あの、だ、だ、大丈夫です……っ!」
レオナード様の言葉にじわじわと顔に熱が集まり火照る。どうしていいか分からず動揺していると、わざとらしく咳払いをしたレオナード様が口をひらいた。
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