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うきうきと手の中にある薬草笛をキュッキュッと鳴らしていたら、突然グイッと腕を引かれる。
「──危ない!」
「…………っ?!?!」
えええ〜〜レオナード様の腕の中に抱きしめられている?! なんだか甘い匂いがするし、密着したシャツ越しに体温を感じてしまう。
「アイリーン、人が多いからよそ見をしているとぶつかるよ」
ばくばくと心臓が鼓動を打って身体が茹だり、慌ててレオナード様から離れた。
「す、す、すみません! 助けてくださって、あ、ありがとうございます……っ!」
薬草笛を鞄にしまうと、レオナード様が手を差し出している。
「危ないから手を繋ごう」
「えっ……?」
あまりにびっくりしてレオナード様を見つめれば、優しい青い瞳のまなざし見つめられている。この先は人も多く迷子になりそうだけど、王太子のレオナード様と手を繋ぐなんて畏れ多いにも程がある。
「ええっと……あの……」
「迷子になったら、とっておきの薬草見れなくなるけど?」
「ええっ?! あっ、あの、手を繋いでもらいたいです!」
「ふふっ、了解。ほら、手を貸して」
手を伸ばしてレオナード様の手のひらに重ねると、指と指を絡めるように繋がれる。驚いたけれど、迷子になったら困ると思ってキュッと握りかえした。
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