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【1】
「……あ〜、晴れたかぁ」
日曜日の朝。
ベッドの中から手を伸ばし、早弓はカーテンの端をめくって外の天気を確かめる。
七月に入って数日が経っていた。二日続いた雨がようやく上がったのに、心は晴れ模様とは行かない。
濡れた靴が乾く間もなく、今日は何を履いて行こうかと考えるのも気が重かった。
約束は十一時。会って、店に入って、お昼を食べて。……会話、して。
──めんどくさ。雨降ったらそれを口実に断れるのに。「雨の日はなんか頭重くて気分良くないんだよね〜。悪いけど」って。
雨天の気鬱は嘘ではないが、出掛けるのに支障をきたすほどではない。仲のいい友人となら喜んで出向くだろう。
……つまり、そういうこと。
しかしこのところ、大学の友人たちと学外で会う機会も減っていた。だからこそ予定も空いていて、誘いを承諾してしまったのだから。
特に何か原因があって疎遠になったわけでもなんでもなく、巡り合わせでしかない。試験前で忙しかったり、何故か塞ぎ込んでいる様子だったり、さまざまだった。
もう二十歳を迎えたものも多く、常にべったり一緒でないと安心できないような幼い関係ではない。大学で会えば普通に会話も交わすし、食事やお茶を一緒にすることも多かった。
大学のサークルで知り合った別学部で同学年の賢人と、恋人として付き合うようになって一年が過ぎた。倦怠期、になるのだろうか。
我ながら早すぎる、と溜息が出そうだ。
「起きて用意するかぁ。約束しちゃったんだから行かないと……」
そう自分に言い聞かせている時点で、もう気持ちは離れているのかもしれない。
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