7人が本棚に入れています
本棚に追加
【2】
不意に頭に過る、二人の関係が変わった日。
単なるサークルの友人だった。気持ちはともかく、二人の間には明確な形は何もなかった。
あの日。サークルの活動はなく、部室に顔だけ出したのだ。
同じく集まった顔触れのうち、いつも通りすぐ帰るという彼と連れ立って部室を後にした。
大学から駅に向かう長い一本道を二人並んで歩く。他のメンバーは大抵残って雑談に興じるため、もう恒例のようになった帰り道の光景。
「堀田くん、あのカフェ新作出たんだって。あたし飲みたいな。一緒にどう?」
「あ、うん。いいよ」
もう少ししたら駅に向かう彼に別れを告げて、早弓は曲がり角の先の自宅マンションへと向かう。
せっかくの二人きりの時間もすぐに終わってしまう、と感じた途端に誘いを掛けていた。
新作ドリンクを飲みながら、普段と何ら変わらない会話を交わす。
二人のカップが空になって、ここまでか、と名残惜しく感じつつも腰を上げて店を出た。
ほんの数歩で、手にぽつんと当たる一滴を感じる。
天を仰げば、真っ直ぐ落ちてくる雨の矢。夕立か。二人とも、傘も持っていなかった。
彼がどうかは知る由もないが、早弓は登校前にスマートフォンで天気予報は確かめている。
降水確率は二十パーセント。「傘は必要ないでしょう」となっていた「傘指数」に一度は安心した。
梅雨の合間の貴重な晴天。
しかし心の奥では確信めいた予感があった。いや、むしろ雨が降ることをどこかで期待していた、のかもしれない。
だから、傘を持たずに家を出たのだ。
最初のコメントを投稿しよう!