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「ごめん。言いたかったことがあって……」
「何?」
素っ気ない呟き。でも返事してくれることが嬉しい。
「あたし、一哉に対して本当に失礼なことばかりしてきたと思う。幼馴染みだからって勝手に近い存在だって思い込んで、あんたの気持ちなんて気にしてなかった」
一哉の顔に一瞬、驚きの表情が浮かんだ。急にしおらしくなったあたしに面食らった感じ?
「……うん。すげえ迷惑だしウザかった」
これは一哉の本音なんだ。本当にあたしのこと嫌がってたんだ。
正直、面と向かって突きつけられるのはつらい。
だけどこの間と違って静かな口調は、「ここでやめたらこれ以上悪くなることはない」ってこと、なのかな。
「ホントにごめん。あたし、これからは気をつけるから。……普通に友達としてやり直せないかな」
「友達って『なろう』『やり直そう』ってもんじゃないだろ」
ふと目を逸らす彼に、まだそこまでは難しいんだな、って伝わる。
全部あたしの自業自得なんだ。誰のせいでも、もちろん一哉のせいでもない。あたしだけの。
「そ、そうだよね。うん、わかった。……あ、じゃあね、お先」
あたふたとエレベータに向かうあたしを、一哉は追い掛けては来なかった。
あたしなんてまったく興味もない様子で郵便受けを確かめてる彼を横目に、エレベータの箱に踏み込んでボタンを押す。
閉まるドアに隔てられて視界から消えるまで、幼馴染みは一度もあたしに目を向けることはなかった。
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