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【3】
「サワちゃん、今日みんなでカラオケ行こうって話してたんだけどどうする? 雨も上がったし良かったら」
「あ、……そうだね。行こうかな。いつも気ぃ遣わせちゃってごめんね」
「えー、別に? サワちゃん、雨降りって苦手なんでしょ? 誰だってそういうのあるじゃない」
あたしの返事に、大学で同じ学科の朋加があっさり頷いた。
普段から「雨は好きじゃない」って言ってるし、ついこの間も誘ってくれたのに断っちゃったから。
クラスの仲いいグループで連れ立って教室を出る。
教室の中でも、窓ガラス越しに聞こえてた雨の音。ようやく上がったけど、また明日には降り出すんだわ。
だからこそ、梅雨の合間のこの晴れた時間は貴重なんだよね。
せめて雨の日だけは一哉に会いませんように。
このところ毎日のように心の中で願いながら、大学から家に向かってた。実際には帰る時間がかち合うことなんてまずないんだけどさ。
一哉のお母さんが、大学入ってから毎日帰り遅いって笑いながら話してたもんね。
彼はあの後すぐ、水島さんと付き合い始めたらしかった。
同じ大学に進んで、学校で会うだけじゃなくてしょっちゅうデートしてんじゃないかな。
今もラブラブ続いてる、って高校時代の友達からも噂が流れて来るから。
もう二年、……三年? 早いもんだね。
そんなの聞きたくもないけど、みんなあたしと一哉はただの幼馴染みだって思ってるから気にしないし。
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