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「お前、習字で吸うやつ持ってないか?」
習字で吸うやつ?
ああ、スポイドか。
「持ってるよ。取ってくるからちょっと待ってて」
私は裏口から自宅に入り、小学生の時に使ったっきり自室の置物と化していた習字バッグの中からスポイドを取り出し、祖母と仔猫の元に戻った。
「それでスキムミルクを吸うんや。ワイが猫を持つ、お前が猫の口にスキムミルクを入れる」
「分かった」
祖母は仔猫を持ち上げ、仔猫の両手をロックした。
仔猫は爪先立ちのような状態になっている。
「やめろ~!(たぶん)」と嘆いている仔猫の口の中に、スポイドで吸ったスキムミルクを入れた。
「……あんまり美味しそうに飲んでないな。ていうか、歯が生えてるで」
生まれて数週間くらいの大きさの、手の平サイズの仔猫なのに?
猫ってそんなに早く歯が生えるの?
「お腹は空いてるはずや。もっとやるんや」
スポイドで吸ったスキムミルクを数回、野良猫の口の中に流し込む。
猫って唇があるのか。
「よっしゃ。これくらいにしといたろ」
祖母が野良猫を下ろし、解放した。
「歯が生えてるから何か食べられるかもしれんで」
「よっしゃ。昨日のご飯残ってるから、ねこまんま作ったろ」
祖母はせかせかと自宅に戻っていく。
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