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しばらくして器を持った祖母が戻ってきた。
「ご飯に鰹と醤油を入れて混ぜたで」
祖母はそう言いながら箸を使ってねこまんまをぐるぐるとかき混ぜている。
醤油はいるかな、と心の中で思ったが、今度は突っ込まずにいた。
祖母がコンクリートの上に器を置くと、仔猫はふんふんと鼻を鳴らしながら匂いを嗅ぎ、小さな口でねこまんまを食べはじめた。
「食べたな」
祖母と私は、仔猫が器から顔を上げるまで、仔猫の後頭部をじっと見つめていた。
少しだけねこまんまを残して顔を上げた仔猫は、下を出して口の回りを舐めていた。
「お腹いっぱいになったかな?」
私が言うと、「なったんちゃうか」と祖母。
「親、迎えにくるかな?」
「さあ、分からん」
しばらく様子を見ようということになり、取りあえず私はカルチャースクールへと向かった。
+
カルチャースクールから帰ってくると、仔猫は、やはり庭の一角……やや鋭角になったブロック塀の内側の壊れた洗濯機を置いてある、ちょうど三角形になっていたその隙間で仔猫はスヤスヤと昼寝をしていた。
私が持っていたコンビニの袋の音に気が付いて目を覚まし、洗濯機の下の隙間から仔猫が出てきた。
「ありゃ、出てきたか」
家柄出てきた祖母は仔猫を両手で持ち上げ、端切れを繋げて作った1.5メートルくらいの長さの紐を仔猫の体に巻き付けた。
「お前が出掛けてる時に作っといてん。これ、着物の腰紐やで」
祖母が言った。
「もう親は迎えに来そうにないな」
私が言うと、祖母が「飼おけ(飼おうか)?」と言った。
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