突然の乱入、ごめんあそばせ

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突然の乱入、ごめんあそばせ

駆け出したハイリアの覚悟はきまっていた。 長杖を掲げ、声高に叫ぶ声は炎魔法と風魔法を混ぜた混合魔術。 本来なら、長い詠唱が必要とされているのだが、そこは闇騎士の隣に立つときめて研鑽に励んだだけあり、詠唱破棄という手段で対処する。 最早、気迫からして一人、違っていた。 「ガリアスさんが心配なんですのね。」 そういうミレイユは、どこか対照的に、気落ちしていた。 彼女は全く別方向で心配事を抱えていたからだ。 名指しされたハイリアは覇気を孕んでおり、怒気すら混じっていた。 「当たり前!!どこの世の中に愛する人の窮地って時に、こんな場所で下らない喧嘩してる【おバカ二人】をこんな大勢で止めに行かなきゃいけないのよ!!しかも内乱の理由が《【女王の即位に反対】》って!!そんな事で即位を認めない国なんか…!滅んでしまえばいいのよ!!」 最早言い方が、ガリアスにそっくりである。 最もガリアスの場合、感情を出さずにこう言うもある。 《「当たり前だ。どこの世に、窮地って時に、こんな下らん喧嘩してる【バカ】を、こんな大勢で止めに行く必要があるんだと、さっき俺は聞いたはずだ。しかも俺は行かないと言ったのを、""""どっかの能筋バカが無理矢理連れてくる""""からな。仕方なく、だ。……しかも内乱の理由が《【女王の即位に反対】》。そんな事で即位を認めないあたり、当分【西のあの国】とはだな。」》 と、めちゃくちゃ不機嫌丸出しな顔で、イライラしながら低温な声で散々こちらを煽るように、辛辣にチクチクと言う始末に違いない。 そして、オーギュストからは猛烈な謝罪と、ガリアスにツッコミが入る。 だが、今のオーギュストはと言うと、ハイリアの爆炎魔法に呆気にとられていた。 オーギュストが扱う高難易度炎魔法、【アルティメット・ファイア】【フィラ・ヘルメラ】等には及ばない。 それでも、「《砂漠の一帯を吹き飛ばせ》」と、オーギュストは指示をしてしない。 女性ゆえに、まごついているとかと見かねたのか、ミディアが言う。 「ちょっとやり過ぎかもね。もう少し抑えたほうがいいんじゃないの?私も一応ちょっと魔法使えるけど、正直、貴女の足元には及ばない。魔力も貴女の下。でも言うわよ。……ちょっとやり過ぎ。仮にさっきので、《今、武人と戦っている女王陛下》が、死んだら元も子もないでしょ?私達が【国賊】で指名手配されるから。それから。………ちょっと、【わが家のギルド長】はいつまで暗い顔、してんのよ!!」 「ん?あ……俺、か、……っって、、痛ッテェ!!」 渾身のミディアのひじ打ち。 クリティカルでオーギュストの脇に二段階打ちで決まる。 ネフィリティス、ミレイユも明らかにオーギュストの様子がおかしいのに気づく。 それもそのはず。 かのロンバルディアの第三皇子をこの手で捕縛し、にかけたことで、周囲はより一層、【オーギュストを英雄扱い】した。 第三皇子はと言うとずっと行方、生死共に不明。 継承戦争の際、第三皇子と第五皇子あったネルキメデスとの間で大規模な継承戦争が勃発。 だが、その第三皇子は。 確か、審判にかけられた。 審判にかけられたら、断罪される。 【『第三皇子は"""普通に"""生きていますよ。』】 家族を殺して普通に暮らしているのか? でもした。 処刑には確か。 国宝で。【磔刑】に。 そうだ。()。 第三皇子の引責に未だに苛むのは、他でもない、オーギュスト・ランコントル自身。 ふと気になる。 ルーの槍は、未だに皇子の身体を貫通したままだろうか。 待てよ、と。 そもそもなんであの断罪で、周囲は第三皇子にたいして【磔刑】を出したのか。 普通はギロチン台送りでもおかしくない。 モノは試しだ。 こんな俺でも、【応えてくれる】だろうか。 「もし、応えたとしたらそれはそれでロンバルディアの帝都内部が大揉めになるが、知ったこっちゃねえ!!!…………""""俺のせい""""だからな!!」 第三皇子が【《仮に存命してもし、ルーの槍に刺されながらも何らかの形で生きているとすれば》】、それは、触れてはいけない真実((タブー))。 ネルキメデスも、ガリアスも。 第三皇子もガリアスの実兄も。 救えるなら、救いたい。 このとき、オーギュスト自身に、奇妙過ぎるほどの『過剰な自信』があった。 》 この『四人』とレグルス一同は後に色々な意味で、【貴族社会】と【教会権力】という二大権力にも爪痕を残していく。
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