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爆発の時の三人
その「"炎"」があまりにも綺麗だからつい見とれてしまったのもある。
ーだって、太陽みたいに綺麗な【『黄金色の羽根が生えた神様、もしくは神様の化身』】だったからー
キカは、とマージャル、左門が死闘を繰り広げる近くにはなたれた爆発魔法から二人を庇いつつ、自分の生まれ育った宮廷に向かって行くのは鳥。
甲高いながらも、どこか美しく。
ピィーーーーーーーーーーーーーーーッ
と、鳴いて、カナーン王宮をみている。
華々しい都は今は見る影もない。戦禍で荒廃寸前にまでなっているばしょもある。
華の都 商業 都市国家カナーン。
そこに表れた、謎の黄金の鳥。
だけどその鳥を見ても不思議と、『【その火の鳥が何をしようとしているかは分かるのに、自然と止める気が起きない。】』
絶対的降服、というべきだろうか。
それとも。
あの鳥が何となくオーギュスト・ランコントルに、どことなく似ている気がした。
真っ直ぐにただ突き進む鳥は、そのまま深緑の両目に絢爛豪華だった王宮を捉えたまま、確実にその宮廷の王宮中にいる人形師団一同目掛け、滑空した。
宮廷の中にいた宮廷士官扮した一団が、何やら悲鳴を上げたのが、かすかに聞こえた。
その鳥が、宮廷に飛び込む際の姿勢も、綺麗だからだろうか。
左門に指摘されて、はじめて気づいた。
自分がその『火の鳥』を見てからずっとずっと、声も出さず、泣いていたことを。
だから、人形師団がこない内に、和解するなら今ならないと思った。
「マッ……」
キカも、マージャルも、お互いが、二人ともあまり、お互いを""詳しく分かっていなかった""から、今回の内乱に繋がった一因にもなったのもある。
そのわだかまりを少しずつ、今から無くしたい。
即位云々の前にキカには覚悟を決めていた事がある。
マージャル・エルドラ。宮廷士官長。
翌々、考えてみたら、不可解な点がある。
ラグナの死のあとに、無くなった母。
母の懐妊が遅くて散々罵ったんだっけ。
実際、キカは『本当に生きていた人間の側室』を何人も見ていたので、何人も顔は思い出す。
何せ人形師扮するラグナが入り浸ったのを、見ていたのだから。
それがショックで、離宮で自発的に自分を忌避する母の元に行くしか無くなった。
そこはあまりにも、信じたくない場所。
皆、これでもかと着飾りその派手な衣裳を勝負のように着る。当時、在籍していた財務大臣が顔色を伺いながら、側室に財政がどうのとか言ってたのが、幼心ながらに父に対して、少し不信感を持つきっかけの出来事。
だけども、今はもう一切そんな感情が、ない。
完全に父親に対してある感情というのは、憎しみでもなければ、寧ろ、哀れみ。
やってきたこと、部下に対する降る舞い。
挙げ句その最期は王宮で部下に冤罪を被せて自死を自作自演。
生死不明ならその所在不明も今はだろう。
だから、ハッキリとさせたいことがあった。
聞くしか、無かった。
「マッ……」
口を開いた、キカを遮るように、片手を地につけ、片膝を着き左手の拳を作り、地面につけ、頭を垂れる。
オルフェリアでの、敬意を忠誠を顕す姿勢。
「……ここまでのようですね。何から話せばいいか。とかく、表立って反乱分子となった私に何も言う権利はありま……」
「いや、あんだろーが!!!色々。キカのオヤジさんのこととか、色々!!!」
「だからそーゆーとこなんだって!!!マージャル・エルドラ!!!可能性なんだけど!もしかしたら、ウチ………マージャルと【『腹違いの義妹』】じゃないか、って散っっっ々悩んでんだから、取り敢えず!!!中入って腹割って話すよ!!!」
「え?」「え?」「え?」
マージャル、""何故か""ジニアとネフィリティスに両脇を抱えられたオーギュスト、そしてキカの、それぞれの、「え?」である。
三者三様の声が飛ぶのを、無視するかたちで、意地を張ったままのキカは、足を王宮に向けたのだった。
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