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人形師討伐後、オーギュスト達はルネの大教会から一目散に退散する事を皆に告げた。
人形師を討伐しただけでなく、逃げようとした大司祭すら殺った事は事実だ。
異変を感じ取ったアルザスの他教会勢力ー五本山の聖騎士旅団ーの残存兵力を考えれば、撤退一択が懸命な判断だったようだ。
気を失ったままの皇帝ネルキメデスは、目立つ外傷はないものの、洗脳の反動から未だに目が覚めない。
もちろんオーギュストはネルキメデスを置いていくつもりは一切ない。
だから、思いっきり頬を引っ叩いて起こすという行動に、一切躊躇いがなかった。
バチーーーン。
思い切ったビンタ攻撃にオーギュストの仲間達は全員仰天している。
弓士のミディア・レイチェル。
狙撃士のネフィリティス・ハークライ、ー彼が逃げる大司祭をヘッドショットで仕留めた張本人なのだが、周囲はそれを責める気は一切ない。ー
回復魔道士のミレイユ・アノイア。
忍の左門ー彼は後述のキカ・ミクリアの親友でもある。ー
|双剣使いのキカ・ミクリア。
上記全員が一斉にギルドー名をレグルスー長のオーギュスト・ランコントルに向けている。
彼らが現在いる場所は中央国家、ロンバルディアではない。
西部統一国で宗教国家でもあるアルザス。その首都、ルネにいる。
その大教会のど真ん中で、ロンバルディア皇帝をビンタして叩き起こす。
文字にしてみると何とも説明しづらいが、彼らの居場所と今の行動を説明するとこうなる。
一発が重たいので二発食らった段階で既にロンバルディア皇帝、ネルキメデス3世の眉が動いていた。
それをオーギュストは見逃さない。
顔をグッと近づけて耳元で声を出した。
「お、き、ろ!!!おい!起きろつってんだろ、この、単純馬鹿!!!」
よく響く声が教会に響き渡る。
しかも皇帝に向かって馬鹿という始末。
頭を抱えるミディア達。
彼らが頭を抱えるのも無理はない。
何せ皇帝に向かって単純、だけではなく、馬鹿とまで言った。
これはいくら何でも、不敬罪に問われても文句は言えない。
ネルキメデス3世が目を開けた。
「あ」
彼の翡翠色の両目がキカを捉えた。
そして、キカ、基、その場にいたオーギュスト以外全員が皇帝を見た。
青ざめた顔でオーギュストとキカを二度見して、理解したのか、半べそをかきながらも全身全霊で低頭姿勢で謝罪する、ロンバルディア現皇帝の姿を。
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