新・赤い流れ星

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* 「あ…あのっ! ゆ、結城君はいますか?」 僕が向かった先は、通い慣れた職場だった。 ……と、いっても、僕が働くエリアとは少し離れた場所。 「結城…? あいつなら、ほら…」 指差された先に、僕の探す人物はいた。 結城怜太郎…通称「ゴースト」 結城の「ゆう」と怜太郎の「れい」からついたあだ名だと思うけど、実はそれだけじゃない。 彼は、霊が見えるということで、この大勢いる従業員の中でもけっこう有名な人物なんだ。 僕みたいに友達の少ない者でも、彼の名前と顔くらいは知っていた。 もちろん、面識はないんだけど…… 「あ…あの、結城君…」 「何か用?」 結城君は仕事の手を止めず、僕の方を見ることもなく抑揚のない声でそう言った。 「あ……あの…はじめまして。 僕、杉本っていいます。 実は君にちょっと相談したいことがあって…」 「あとちょっとで仕事が終わるから、公園で待っててくんない?」 「う、うん、わかった。 じゃあ、待ってるね。」 僕は、具合が悪くて帰ったことになっていて、しかもそのせいで夜の仕事は休むことにもなってたのに、それでもあえてここに来たのは、エリカの後ろにいたあの男のことを聞きたかったから。 結城君は、自分の能力を生かして心霊相談みたいなこともやってて…彼に聞けばきっと何かわかるって思ったんだ。 いや、彼以外には頼れる人物が思いつかなかった。 ただ、相談にはお金がかかり、しかも、気分によっては相談に乗ってもらえないこともあるって話だったけど、とにかく一応頼むだけでも頼んでみようと、そんな藁にもすがるような気持ちで僕はここにやってきた。 だって、あの男をあのままにしておくことは出来ないから。 エリカは僕と同じように鈍感だけど、だからといって、あんなのをくっつけてたらきっと良いことはないと思うんだ。 (でも、なんだかちょっと怖そうな人だったなぁ… 話し方にも愛想がないし… 僕の相談には乗ってくれるだろうか… あ、そういえば、相談料はどうのくらい取られるんだろう? 高かったら困るなぁ…) そんなことを考えながら、僕はあのベンチに座っていた。 そう、カリスタリュギュウス流星群を見ながら寝てしまったあのベンチ… (……待てよ…僕、あの時本当に眠ってしまったんだろうか? だったらあれは夢? でも、僕には突然おかしなものが見えるようになっていた。 だったらやっぱりあの星のパワー…?) いまだに正確なことが何もわからない。 だけど、結城君があの男を見てくれたら、あれが僕だけに見える幻覚なのか、実際に霊なのかがはっきりするはずだ。 僕は逸る気持ちを押さえ、結城君の来るのを待った。
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