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「えーっと…」
唐突に背中から聞こえた低い声に、僕は反射的に振り向いた。
「あ!結城君! 来てくれたんだね、ありがとう!」
結城君は全身黒尽くめで…髪の毛は長いしちょっとしたヴィジュアル系みたいな雰囲気だった。
「さっきの人だよね? 相談って…もちろんあっちの方…だよね?」
「あっちって…ま、まぁ、そうなんだけど…」
「……で、どういう種類?」
結城君は、僕の隣に座り、胸ポケットから出した煙草に火を点けた。
「種類って…よくわからないんだけど… 出来たら、実物を見てほしいんだ。」
「でも、あんたには特に何も憑いてないよ。」
「僕じゃないんだ。 みてほしいのは僕の妹。
だから、僕の家まで来て…」
結城君は、その言葉に軽い舌打ちを鳴らした。
「あんたん家、どこ? あんまり遠いとちょっとなぁ…
それと、往復の交通費は払ってもらうよ。」
結城君の口調はかなり優位に立った言い方で、僕もあまり良い気分ではなかったけど、今は彼しか頼れる人がいないんだからと、僕は自分に言い聞かせた。
「もちろんだよ。 よろしくお願いします。」
ついでに料金のことを聞いてみたら、それはケースバイケースだから、みてみないとわからないということだった。
まるで、回らない寿司屋の「時価」みたいな雰囲気で、いくら取られるのかと不安はあったけど、まさか問題になるほどの値段ではないだろう。
そんなことをすれば、社内で噂にもなるだろうから。
移動の間も結城君は一人で音楽を聞いていて、話すことはほとんどないままに、僕達はようやくマンションの前に着いた。
「ここなんだ。 結城君、まず、妹に何か憑いてるかどうかみてほしい。
憑いてたら妹にわからないように合図して。
妹にはまだ何も言ってないから。 で、どんな奴かも僕が訊くまで言わないでほしいんだ。」
「わかったよ。」
結城君は、相変わらずふてぶてしい態度で頷いた。
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