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「テル?どこに行って…」
エリカが僕の後ろにいた結城君に気付いて、軽く頭を下げ、結城君も同じように小さく頭を下げた。
後ろの男は相変わらずエリカにぴったりとくっついている。
「エリカ、こちらは同僚の結城君。 悪いんだけど、結城君の分も何か作ってくれないか?」
「良いわよ…結城さん、ちょっと待ってて下さいね。」
「あ、ありがとう。」
エリカが台所に立った隙に、僕は結城君に小声で訊ねた。
「どうだった?」
「す、すげぇ…」
「えっ!そんなにたちの悪い奴なの!?」
「あの子、あんたの実の妹?」
「そうだけど…ねぇ、そんなに悪い奴なの?」
「信じらんねぇ…!
あんたと全然似てないじゃん。
なんであんたの妹なのに、あんなに可愛いんだ!?」
結城君は、エリカのことをかなり気に入ったみたいだ。
ま、確かに、こういうことは今までにもあったけど、今はそんなことをどうこう言ってる状況じゃない。
「結城君、そんなことより、エリカには憑いてるの?憑いてないの?」
「バッチリ憑いていやがる。」
「やっぱり…じゃ、それは男?女?」
「男だ。」
やっぱり… その後も僕はそいつの容姿について質問した。
それは全部僕に見えてる通りの容姿で…つまり、僕が幻覚を見てるわけではないことがはっきりした。
「でも、エリカは最近おかしな場所には行ってないって言ってたよ。 ああいうのはおかしな場所に行かなくても憑くものなの?」
「あんた、一応、みえる人なんだろ?
なのに、何もわかってないんだな。」
「わかってないって…?」
「あれは、生き霊。
エリカちゃんにものすごく強い想いを抱いてる男だよ。」
「生き霊?じゃ、幽霊じゃないんだ…良かったぁ…」
「ばっかだなぁ… 死んだ者より生きてる奴の方がエネルギーは強いんだ。
だから、祓うにもより強い力がいるんだ。」
「そうなの?」
そんなこと、全く知らなかった… 生き霊と死んだ人の霊の違いもわからないし、そもそも、僕はそういうものを見たのは初めてなんだから。 やがて、エリカが温かい湯気を立てるピラフを運んできた。
「お待たせ~」
「わぁ!」
結城君は、目の前のピラフにとても嬉しそうな顔をした。
さっきまでの仏頂面とはまるで別人みたいだ。
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