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「杉本!杉本!」
誰かに肩を揺さぶられて僕が目を開くと、そこにいたのは先輩の北村さんだった。
最近、同じエリアの担当になった人で、多少暑苦しい所はあるけどなにかと面倒見の良い先輩だ。
「き、北村さん!」
「おまえ、こんな所でなにしてるんだ…?」
(あ…!)
「き、北村さん、隕石はどうなったんです!?
皆は大丈夫だったんですか?
もしかしたら北村さんが僕を助けて下さったんですか?」
「隕石…っておまえ… もしかして、ここでサボって寝てたのか?」
「ぼ、僕はサボってなんか…」
(あ…あれ?)
僕はあたりが明るいことに気が付いた。
(どうなってるんだ? さっきは確か夜中の0時過ぎだったはず… それに隕石は?
あの時、僕はもう逃げきれないと思ったのに、なんでなんともないんだ?
隕石にぶつかってなんともない筈がないし、このあたりにもまるで変わった様子はない。)
「さっき、このあたりをジョギングに来た社員が、ベンチで眠ってる奴がいるって教えてくれたんだ。 それがまさかおまえだったとは…
どうしたんだ?こんなことするなんておまえらしくないな。」
日頃から存在感の薄い僕は、真面目だということだけを印象として受け止められていたようだ。
「ぼ、僕は、本当にサボってたわけではないんです。 あ、あの…休憩時間にちょっと風にあたりたくなって…」
「風にって……もしかしておまえ具合でも悪かったのか?
熱でもあったとか?」
「え……え……えぇ、まぁ……」
まさか、カリスタリュギュウス流星群が見たかったからだとも言えず、僕は北村さんの言葉に頷くしかなかった。
「そうだったのか…そんなことならなんで俺に言わないんだ。
きっとおまえが考えてたよりも具合が悪かったんだな。 頭は痛くないのか?」
「は…はい、そういえば少し痛いような…まぁ、我慢出来ない程ではありませんが…」
僕の頭は混乱はしていたけれど、痛くはなかった。
だけど、今は正直に答えてはいけないような気がして、僕はそんな嘘を吐いた。
「きっと、具合が悪すぎて気を失ってたんだな。
そうじゃなきゃ、おまえがこんな所でサボる筈ないよな。
だけど、こんな所で夜更かししたんじゃ、ますます身体が冷えただろう。
早く帰って今日は休め。
俺が、家まで送って行ってやるよ。」
「い…いえ、大丈夫です。
僕、一人で帰れますから。」
「遠慮すんなって。」
結局、北村さんは僕を家まで送り届けてくれた。
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