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「じゃあ、杉本、無理すんなよ。 今夜の仕事は来なくて良いからな。 俺の方からちゃんと言っとくから。」
「あ…ど、どうもありがとうございました。」
(北村さんて、本当に良い人だな…)
北村さんを見送った後、僕はベッドの上にごろんと横になり、昨夜のことに思いを馳せた。
(おかしい… あの時、僕は眠ってなんかいなかった。
夜勤には慣れてる。
あんな時間に突然眠り込んでしまうことなんてないのに…なぜ…)
あたりを真っ赤に染めたあの赤い隕石は、夢なんかじゃなかった。
異変を感じ、僕が目を開けた時には隕石はもう目の前まで迫ってて… あまりの恐ろしさに僕は足がすくみ、立ち上がることさえ出来なかった。
だから、諦めたんだ。
もう逃げることは無理だって… なのに、どうして僕は無事だったんだろう?
いや、あの公園もなんともなかった。
隕石にぶつかったりしたらきっと僕なんて全身まっ黒焦げになって……いやいや高温で骨までどろどろに溶けてしまうんだろうか?
それとも一瞬で跡形さえなくなってしまう…?
なんせ隕石なんだから。 きっと凄まじい温度だろうし…
(そういえば……)
僕は、その時、あることに気が付いた。
「そうだ!全然熱くなかった…!」
僕は、興奮のあまり、思わず頭の中の思いを声に出していた。
隕石が落ちる時にはものすごい轟音がすると聞いたことがある。
なのに、あの隕石はあれほど近付いていても何の音もしなければ、熱さもまるで感じなかった。
(だったら、あれはやっぱり夢? 僕は、カリスタリュギュウス流星群を見ているうちに眠りこんでしまったというのか?)
それはとても納得のいくことではなかった。
だけど、そうとでも考えなければ辻褄が合わない。
(……自分では全然気付いてなかったけど… 僕、最近、疲れてたのかな…)
僕は、もやもやした気分をすっきりさせたくて、浴室に向かった。
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