新・赤い流れ星

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* (あぁ、さっぱりした!) 僕は冷蔵庫から冷えたお茶を取り出して、一気に飲み干した。 今夜は、北村さんの勘違い…いや、僕の嘘…に、なるのか? とにかく、そういうことから夜勤も休んで良さそうだから、久し振りにゆっくりしよう。 疲労っていうものは自分では気付いていないうちにけっこうたまったりするものらしい。 だって、僕はそれ程疲れてるとは思ってなかったのに、昨夜はあんな風に眠り込んでしまったんだから。 まだ少し眠いような気はするものの、それよりも今は空腹だ。 (なにかおいしいものが食べたい…) でも、どこかに食べに行くのも面倒だし、リラックスしたい。 家に……あ、今の時間、母さんはパートに行ってるはずだ。 それを思い出した途端、ほんの少し気分が沈んだ。 僕は、今、一人暮らしをしている。 別に実家でも良かったのだけれど、友達にいい年して実家住まいなんて恥ずかしいだの、そんなんじゃますます彼女も出来ないだの言われて、僕がようやく重い腰をあげて一人暮らしを始めたのが昨年のことだった。 とはいっても、実家までは歩いて十分かかるかどうか…僕の部屋もそのままだし、夕食はたいてい食べに行ってて掃除は母さんが週に何度かしに来てくれて… 最近は、パートを始めたから前程頻繁じゃないんだけど。 夕食後、帰るのが面倒臭くなって実家に泊まることもしばしばあるし、この頃では真剣に実家に帰ろうかと思ったりしてる。 その時、不意に携帯が鳴った。 画面に表示されているのは、実家の番号だ。 「はい。」 「あ!テル?あたし~」 「……なんだ、エリカか…」 「なんだとは酷いわね!」 一瞬、恋人同士のようにも思えるこの会話の相手は、妹だ。 僕より六つ年下の二十二歳なんだけど、なぜだか友達には二十歳だと年齢詐称をしている。 芸能人でもないくせに、なぜ年齢を偽るのか……僕には全く意味がわからない。 地味で目立たない僕とは違い、エリカは兄の僕から見ても確かに可愛い。 そこらへんのグラビアアイドルよりずっと可愛いと思う。 だけど、子供の頃から皆にちやほやされて育ったせいか、多少わがままで、そして根気というものが全くない。 バイトも決まったかと思うとすぐにやめてて…年間三十日も働いてないんじゃないかと思う。 それで、エリカの用件はというと、なんでも、北村さんが実家にも連絡をしたらしく、母さんが不在だったからエリカが電話を受けたということらしい。 ま、一応、心配してくれるだけマシといえばマシか…
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