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「やってたわよ。 今回はまぁそこそこ続いたし…ま、昨日やめたんだけどね…」
(エリカはおかしな場所には行ってないって言ってる。
じゃあ、そういう場所でとりつかれたってわけでもないんだな。
っていうことは……やっぱりあれは僕の幻覚…?)
恐る恐る再び視線を上げて、僕はエリカを見た。
いや、もちろん、見たのはエリカの後ろの男なんだけど。 何度も見ているとやはり少しは慣れて来るもので…怖いのは怖いけど、最初の時よりはずいぶんと僕も落ちついていた。
気持ちが落ち着くと、今まで気付かなかった事にも気付く事が出来た。 最初に思ったのは、その男がごく普通の状態だということ。
普通と言っても身体が透けてるんだから、普通って言う言葉は適当ではないのかもしれないけれど、つまり…良くあるホラー映画みたいに頭から血を流すでもなく、腐ってるようでもなく… 身体が透けてること以外には、至って普通の状態だということだ。
服もちゃんと着てるし、あれで透き通ってなけりゃ、僕たちとなんら変わらない。
年齢は、三十代後半…いや、そんなにはいってないか、前半くらいかな?
暗そうで元気のない感じだ。
さっきから何度か目はあったように思うけど、そいつは僕には全く関心を示さない。
心霊もののドラマなんかじゃ、霊は、霊が見える人がわかるみたいで、見える相手に何事かを言って来ることが多いのに、その男にはそんな素振りは少しもない。
(ってことはやっぱり僕は幻覚を見てるのか?
もしかしたら、自分で思ってるよりも重い脳の病気か何かにかかってたりして…どうしよう!?
それともああいうのはドラマの中での作り事で、実際はそうでもないのかなぁ?)
考えれば考える程、僕の心の不安は大きくなって、どうにも我慢しきれなくなっていた。
「エリカ…僕、ちょっとでかけて来るよ!」
僕は手近にあったパーカーを羽織った。
「出掛けるって、あんた… ごはんはどうすんのよ。
お腹減ってんでしょ? それに体調は?」
「平気だよ!」
僕はエリカとそいつを部屋に残したまま、慌しく外へ飛び出した。
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