新・赤い流れ星

9/92
前へ
/92ページ
次へ
「やってたわよ。 今回はまぁそこそこ続いたし…ま、昨日やめたんだけどね…」 (エリカはおかしな場所には行ってないって言ってる。 じゃあ、そういう場所でとりつかれたってわけでもないんだな。 っていうことは……やっぱりあれは僕の幻覚…?) 恐る恐る再び視線を上げて、僕はエリカを見た。 いや、もちろん、見たのはエリカの後ろの男なんだけど。 何度も見ているとやはり少しは慣れて来るもので…怖いのは怖いけど、最初の時よりはずいぶんと僕も落ちついていた。 気持ちが落ち着くと、今まで気付かなかった事にも気付く事が出来た。 最初に思ったのは、その男がごく普通の状態だということ。 普通と言っても身体が透けてるんだから、普通って言う言葉は適当ではないのかもしれないけれど、つまり…良くあるホラー映画みたいに頭から血を流すでもなく、腐ってるようでもなく… 身体が透けてること以外には、至って普通の状態だということだ。 服もちゃんと着てるし、あれで透き通ってなけりゃ、僕たちとなんら変わらない。 年齢は、三十代後半…いや、そんなにはいってないか、前半くらいかな? 暗そうで元気のない感じだ。 さっきから何度か目はあったように思うけど、そいつは僕には全く関心を示さない。 心霊もののドラマなんかじゃ、霊は、霊が見える人がわかるみたいで、見える相手に何事かを言って来ることが多いのに、その男にはそんな素振りは少しもない。 (ってことはやっぱり僕は幻覚を見てるのか? もしかしたら、自分で思ってるよりも重い脳の病気か何かにかかってたりして…どうしよう!? それともああいうのはドラマの中での作り事で、実際はそうでもないのかなぁ?) 考えれば考える程、僕の心の不安は大きくなって、どうにも我慢しきれなくなっていた。 「エリカ…僕、ちょっとでかけて来るよ!」 僕は手近にあったパーカーを羽織った。 「出掛けるって、あんた… ごはんはどうすんのよ。 お腹減ってんでしょ? それに体調は?」 「平気だよ!」 僕はエリカとそいつを部屋に残したまま、慌しく外へ飛び出した。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加