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 俺は曖昧に「そうだなあ」と呟いた。子どもの頃から生き物が好きで昆虫やら爬虫類やら魚類やらを外で捕まえては飼育していた。高校を卒業した後は専門学校の水生生物専攻コースに進学し、それだけでは飽き足らず結局水産学部のある大学に四年間通った。専門学校に通っていた頃からペットショップのアルバイトをしていて、大学を卒業した後も続けていた。いい加減定職に就こうと就職活動を始めたのが三十代になってから。長南ケミカルに採用されて今に至る。  今の仕事は楽しいとも思わないしやりがいも感じない。アルバイトよりは福利厚生がしっかりとしていて収入が確保できるから、という理由で働いている。茜の言い分もまあ、わかるんだけど。  ビールがカウンターに置かれた時にちょうど俺のスマートフォンが鳴った。上司からの電話だ。応答すると「休みの所悪いんだけど」と前置きしてから「今から生命研行けない?」と言われた。俺は一旦スマートフォンを耳から離し時刻を確認してから「わかりました」と答えて通話を終えた。スマートフォンをスラックスのポケットに押し込み「仕事行ってくる。ビール飲んじゃって」と席を立った。「社畜だなあ」と兄貴が言い、「電話出なきゃ良かったのにー」と茜が声を上げた。俺はふたりに軽く右手を上げて店を出た。
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