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 三十五億五千万円か。莫大だ。俺が一生かかっても使い切れなさそうだ。いや待て、あの筋肉ダルマを飼育するのにそれくらいかかるということか?だとすれば遺産で俺の生活が豊かになるとも限らないというわけか。 「じゃ、まあそういうことだから」と話を切り上げようとする生命君。俺は「待て待て待て。俺まだ同意してないんですけど」と引き留めた。 「ほんと頼む。一生のお願い」 「こんな場面で一生のお願いを消費していいんですか」 「あのバイオノイド、タカラって言うんだけどな、社長以外に懐かないんだ」  社長以外に懐かないなら俺が飼うのも無理じゃないか?と思った。その疑問を察したように生命君は続けた。 「平津君は若い頃の社長に良く似ている」 「そうですか?」 「モニターをご覧ください」生命君がそう言った数秒後モニターに写し出されたのは白衣を羽織った四十代ほどの男性だった。 「これは生命研に所属していた頃の菱沼宗一郎氏です」  言われてみればまあ、似ているかもしれない。これといった特徴のないのっぺりとした顔付き。ザ・アジア人といった感じの重い一重目蓋。というかこんな奴渋谷のど真ん中に行けばいくらでも見つけられるぞ。スカウトして来い、芸能事務所の如く。
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