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 スーツ姿の男は俺を白いハイエースの前に半ば無理矢理立たせると後部座席のドアを開けた。シートを畳んだ状態のフラットなスペースに白い服を着た筋肉ダルマことタカラが横たわっていた。白い服は袖がびろーんと長く身体に巻きつけて両腕を固定する拘束衣だ。ネットの画像でしか見たことのないような姿に俺は「ヒト型の生体ってこうやって輸送するもんなんですか」とスーツの男に訊ねた。俺の声を聞いたタカラは顔をこちらに向けて「じいじ」と声を上げた。 「こいつは暴れるから」スーツの男は言って「ほら下りろ」とタカラの頭を叩いた。身体をもぞもぞ動かし自由な両足を地面に下ろすとそのまま立った。改めて見るとやはりデカい。二メートルはありそうだ。スーツの男が大きなビニールバッグを俺に押し付けた。 「服。感染症の心配がなければそんなに着替えなくていい。餌はヒトと同じ。タンパク質多めがベスト。トイレも風呂も食事も自分でできる」 「はあ」 「飼育費用は月五十万ずつ平津の給料の振込先に支払う。もっと欲しければ生命研に連絡してくれ」 「わかりました」 「じゃあ、これで失礼」  スーツ男は深く礼をするとハイエースに乗って去って行った。タカラが「じいじこれ取ってー」と上体を左右に振った。
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