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 タカラの寝る場所を確保しておくのを忘れた、と夜になって気が付いた。来客用の布団など俺の住まいにあるはずがない。仕方がないのでベッドを共有するか、と思いクロメダカをじっと見ているタカラに「おい」と声を掛けた。タカラは肩をぴくりと動かして顔を上げた。 「寝る所俺と一緒でいい?」  タカラは小さく首を横に振って「今日はメダカちゃん見てる」と小さな声で言った。俺は「そう」と呟きベッドに横になった。一応少しスペースは空けて寝たが、考えてみればこの程度の隙間じゃタカラの巨大な身体は収まらない。  翌朝俺が目を覚ますとタカラは床の上に寝転がっていた。メダカを見たまま眠ってしまったらしい。スマートフォンの時計を見るといつもよりだいぶ遅い時間に覚醒したことがわかった。「やべ」と呟き身体を起こしてスーツに着替えた。鞄に財布と社員証と鍵と鉄道の定期券が入っているのを確認してから、財布から紙幣を出してタカラを揺さぶった。 「俺仕事行ってくるから。これでメシ買って食って」  タカラが目を擦りながら身体を起こし紙幣を受け取った。俺は物置にしまっておいた合鍵をタカラに放り投げ「じゃ」と言って家を出た。  始業時間には何とか間に合った。朝のミーティングを終えた直後に岸がニヤニヤしながら俺のデスクに近付いてきた。
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