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 俺はイカリムシを抜いたメダカを見てみた。瓶の底に沈んで動かない。俺は溜め息をつき、「駄目だったか」と呟いた。鼻を啜る音が聞こえてタカラを見遣ると涙をボロボロ流して泣いていた。啜りきれなかった鼻水が垂れている。正直、引いた。俺だって悲しい。できれば生きていて欲しかった。でもこんなに泣くほどでもない。俺はティッシュを箱ごとタカラに渡した。 「タカラが指入れたから?」 「違う。それは関係ない。タカラは悪くないよ」  多分、少し前に俺が相模川で拾ったタニシにイカリムシの卵なり幼生なりがくっついていたのだろう。それぐらいしか心当たりがない。数百円をケチって野生のタニシなんかお迎えするんじゃなかった。  そこでやっと気が付いた。床に紙幣と合鍵が置いてある。俺は鼻をかむタカラに「おまえメシは?」と訊ねた。 「食べてない」 「なんで」 「タカラはひとりで外に出ちゃいけないんだよ」  俺は額に手を当てて天井を仰いだ。そうだった。こいつは社長の宝物だ。放し飼いなんかするわけない。俺は部屋のエアコンを点けてからコンビニで買ってきた鮭のおにぎりをタカラに差し出した。 「おにぎり食える?」
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