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「ワクチン接種の記録とか、あれば出して」 「ああ、はい」 「あとそいつ、吠える?」 「吠え、ないんじゃないですかね」 「去勢は?」 「あ、いやー、わかんないす」 「まあその辺も確認しといて」 「はい」  申請書を眺めながらアパートに戻った。去勢、って、そもそもバイオノイドに生殖能力なんかあるのか?そういえばタカラがすっぽんぽんになってるのまだ見たことないな。そろそろ着替えさせないとな。ヒトと同じ身体の作りなら感染症の可能性もなきにしもあらずか。ワクチンの記録は生命研に問い合わせないとわからないな。あれこれ考えながら部屋に戻った。水槽の前から動かないタカラに「去勢してんの」と訊ねてみたら「ちんちんもタマタマもあるよ」と答えた。そういう知識はあるんだなと思った。  次に俺はタカラの分の寝床を整えた。脚が布団からはみ出さないようにロングサイズの寝具を揃えた。抱えて持ち帰るのは不可能と判断したので軽トラックを借りて持ち帰った。車を店に返して帰宅するとタカラは自分できちんと布団を敷いていた。俺はまだタカラをどういう存在として扱うべきかわからない。あらゆる行為に手を出してやるほど何もできないわけではないが、ヒトと呼ぶにはどこかおぼつかない。子どものようだ、と表現するのも何だか違う気がする。
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