タカラ君は社長の宝物でした。

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　タカラは一日中水槽を眺めていた。外が少し暗くなってきた頃、俺は水槽のそばに適当に置いたLEDライトの電源を入れた。水を通してそれなりに綺麗に光る。タカラも「きれー」と喜んでいた。社長の住まいにはもっと大きな水槽ともっと派手な色の魚がいただろうに。とはいえ俺もお金持ちになったらアロワナを買いたいだとかそういう願望はない。買える生活水準の高さはすごいと思うが、ミナミヌマエビやクロメダカが見劣りするとは思わない。生体の価格なんてヒトが勝手に決めたものだ。命に優劣はつけられない。

　外に出てないのであまり汚れていない気もするが、この日は風呂に入れた。ヒトだったら毎日入るしな、と思いつつタカラを風呂場に誘導したら「じいじと一緒に入る」と言い出すので平民御用達の便器と洗面台と湯船がギチギチに詰め込まれたユニットバスを見せたら「やっぱりひとりで入る」と訂正した。