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ザリガニの交尾は、ものすごく“交尾”っぽい。ヒトのセックスにおける正常位に似ている。メスが仰向けになりその上にオスが乗っかる。オスはハサミでメスのハサミを押さえ腹部をくっつけて精子を渡すのだ。俺がザリガニの交尾を初めて見たのは忘れもしない幼稚園時代。園内の水槽で飼っていた二匹のアメリカザリガニが交尾を始めたのを嬉々として先生に報告したらそれとなく流された。あんなにセックスっぽい交尾をしていたらそりゃスルーしたくなる。今となれば良い思い出だ。
タカラも少し驚いたような顔をしてから困ったように眉を下げた。俺はケラケラ笑い「生き物の神秘だよなー」などといい加減なことを言ってタカラの布団に横になった。新しいマットレスの感触は抜群。しかも広い。俺は長身な方ではないがこれだけ布団が大きいとやはり快適だ。寝返りを打ってもまだまだ余裕がある。少し布団の感触を確かめるつもりがそのまま眠ってしまった。完璧な寝落ちだった。
どれくらい時間が経ったのだろうか。目を覚まして驚いた。仰向けに寝転がった俺の目の前にタカラの顔があった。風呂から出てしばらく経っているというのに顔がアメリカザリガニのように赤く火照っている。俺は何とか「どしたん」とだけ言えた。
「ここでは我慢してたのに」
「何を？」
「じいじのせいだ」
「だから何を？」
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