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 ひとりでは外に出なかったタカラも、俺と一緒だとすんなり外出した。腕白キッズの如くはしゃぐ様子やどこかへ走り出してしまうことはなく、むしろ不安げにキョロキョロと辺りを見回して俺から離れなかった。Tシャツの裾を掴まれて非常に歩きにくい。仕方がないので手を繋いだ。俺達、傍から見たらどんなコンビに見えるんだろうなという不安をよそにタカラはニコニコ嬉しそうにしていた。  高速バスに揺られること約二時間。甲府駅で下車した俺達は保養所に指定されているホテルに荷物を置いて昭和町に向かった。一般家屋が建ち並ぶ静かな場所、短い横断歩道を渡った先の古い建物。小綺麗にした広い庭の向こうに「杉浦醫院」の看板が見えた。俺は思わず両手を合わせるようにして「おぉ」と声を漏らした。「ここ何?」とタカラが首を傾げた。 「地方病の歴史を伝える記念館」 「ちほーびょー?」 「ずっと行ってみたかったんだぁ」  俺はいそいそと靴を脱ぎ建物の中に入った。当時の病院をそのまま残した館内は薬の瓶が並んだ棚や古めかしい医療器具も残されている。何やら立派なグランドピアノも置かれていてお金持ちのお屋敷、なんて言われても納得してしまいそうな内装だ。俺は展示品やらキャプションを見ればわかるようなことをベラベラ喋った。
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