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「この地域には独特な病気がずっと流行ってたんだ。原因がわかってなかったんだけど、専門家の努力や解剖を承諾した患者のおかげでそれが吸虫の仕業だとわかった」 「ふーん」 「で、何をしたかっていうと、吸虫をヒトに媒介するミヤイリガイを駆除したんだ」  タカラが首を傾げた。そう、俺達がどうしても気になってしまうのはそこだ。根本的な原因の日本住血吸虫ではなく、中間宿主のミヤイリガイを殺すことで病気を予防し、この地域の人々は百年以上に渡る地方病との闘いを終息させた。俺は瓶の中にコロンと入った小さな巻貝を指差した。タカラが瓶のミヤイリガイを覗き込んで困ったように眉を下げた。  建物の二階では広い部屋で地方病に関する映像を放映したり地元民が作った本を展示していた。タカラが地元の中学生が描いた地方病の絵本をかなり真剣に読んでいた。字は習ったんだな、とそこで確認できた。 「同じような病気が他の場所でも確認されてるんだけど」  再び一階に戻り、ミヤイリガイの瓶の前で動かなくなってしまったタカラに俺は声を掛けた。 「福岡にミヤイリガイの慰霊碑があるんだって。ヒトの都合で駆除されたミヤイリガイが成仏するようにってさ」それから俺はどんな表情を作ってよいかわからず、結果苦笑した。「ミヤイリガイ的にはどう思ってんだろうな」 「この子達悪いことしてないのに」
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