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 それからタカラは鼻をズズッと啜った。「死んじゃったら寂しいもん」という声は既にフニャフニャと弱々しくなっていた。それでも蕎麦と鳥もつ煮を食べる手は止まらない。 「寂しいもん。じいじがいなくなって寂しいもん」  とうとう涙まで出てきた。短い袖で目元をゴシゴシ擦りながら鳥もつ煮を口に運ぶ。「死んじゃった。じいじ死んじゃった」と何度も言いながらメシを食うタカラ。そんな状態で食べても美味くなんかないだろうに。タカラの異常行動に気が付いた他の客がチラチラとこちらを見る。まあ、そりゃ見るだろうな。俺だって泣きながらメシを食うガチムチ男がいたらガン見する。  タカラは少しだけヒトに歩み寄ることができたのだと思う。自分が同じ立場だったらと考えて肯定することができたのだ。そしてようやく目が覚めた。「じいじ」がどこにもいないことをやっと認められた。俺はじいじではなくなった。俺はもう何者でもない。
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