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 その後はタカラを何とか甲府市内のホテルまで連れて行きチェックインした。ツインルームのベッドに突っ伏してスンスン泣くタカラを時折気にしつつ窓際に立つが富士山は見えなかった。  高い山に囲まれた土地は心なしか日が暮れるのも早く感じる。タカラはいつの間にか泣き止んで眠っていた。兄貴の所の子どもがこんな感じで号泣からの寝落ちをキメているのを見たことがあるななどと思いながらホテルを出て食べるものを買ってきた。  それからまたしばらくぼんやりとテレビでローカル情報番組を見ているとタカラが身体を起こした。俺は部屋の電気を点けた。 「おはよう。信玄餅食う?」と俺が赤い袋を見せるとタカラは何度か瞬きをしてからジトっとした目で俺を見た。数時間前までくりくりお目々で俺のことを「じいじ」呼ばわりしていた可愛いタカラ君。夢から覚めた途端この態度とは理不尽極まりない。 「布団に溢すからこっちで食うぞ」と俺が手招きするとノソノソした動きでベッドを下りて窓際の椅子に座った。タカラの体格では低すぎるテーブルに袋から出した信玄餅を置いた。タカラは椅子に座った状態でも手は脚の間に挟んでいる。
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