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「タカラを誰かに食べてもらって、うんちになって、自然の栄養になって、その栄養でお魚ちゃんが元気に育って、それをお母さんが食べて、赤ちゃんが生まれたりしたらさ」タカラが首を左右に傾けながら言う。「またじいじに会えるような気がする」 「そうだといいな」  それからタカラは俺の顔をまじまじと見る。「よく見るとじいじにあんまり似てないね」 「理不尽だな」 「お名前は?」 「平津弦誠」 「じゃあ、ゲンちゃんだ」 「うん、まあ、いいや、ゲンちゃんで」  こいつが俺と同じように精子と卵子を掛け合わせて作られたヒトだったら、多分どこかのタイミングで愛想を尽かしているだろう。ここまで世話をしてやらなかったはずだ。ほんと、タカラがタカラで良かった。  ヒトを好きになれなくても大丈夫。寄り添う振りして知った気になって何となくわかり合えばいいんだから。人間社会なんてそんなもんだから。俺だってとりあえず溶け込んで生活できてるんだから。きっとタカラにもできるよ。最後はそう伝えてお別れしようと思いながらラスト一個の信玄餅を口に入れた。その時だった。 「タカラ、ゲンちゃんのことも好きになれそうな気がする」  タカラが言った。そうか、おまえはすごいな。俺も歩み寄ってやらないとな、と思った。
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