タカラ君は社長の宝物でした。

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　ファイルを解凍するとなかなかの容量のPDFデータが出てきた。一ページ目は「このたびは、こんなバイオノイドを引き取ってくれてどうもありがとう　ご使用の前にこの取扱説明書をよく読んで　ずっと正しく優しく扱ってね」から始まっている。西野カナか。というかこういうのは俺がタカラ引き取った時点で作成しておくべきマニュアルだろうがよ。

　取扱説明書はタカラの今までの生活について詳しく書かれていた。一日の過ごし方やら食生活やら、日々の体温や体重体脂肪等々細かいデータに至るまで事細かに記されている。タカラが研究所の実験体であることがよくわかる。社長の宝物として彼の別荘で甘やかされていたとしても、細かい計測は続けられていたのだろう。

　テンテン君は回りくどい文面で何やらしたためていたが、要するに「タカラは俺の元で暮らすが研究対象であることには変わりないので健康維持に努め、毎日体温体重等最低限のデータを計測して提出して欲しい」ということだ。仕事終わりに電気屋に寄って体組成計でも買おうと思った。

「そういやおまえら旅行中に情報共有で来たメールなんだけど、見た？」

「何の話」

「まあ見りゃわかんだけどさ、星口のバイオノイドがやべーって話」