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「ゲンちゃん今日来られないかと思ったよ」レストランのカウンター席につくなり茜は言った。ちなみにゲンちゃんは俺の本名である弦誠(げんせい)から付けられたあだ名だ。こう呼ぶのは母親と茜ぐらいだが。 「ニュース見たよー。大変だね」 「ヤマは越えたから」 「今度は新社長の就任で忙しくなるんじゃないか」と言ったのはカウンターの向こうの鉄板で肉を焼く兄貴だ。名前は平津誠太。ここのレストランのシェフをしている。水泳経験者で身体がデカい。割と早く結婚して二児の父親。見た目の厳しさが俺とは段違いだ。茜が俺のことを「ゲンちゃん」と呼ぶのに対し彼を「兄貴」と呼ぶのは何となくわかる。兄貴の前じゃ俺には兄の威厳が欠片も感じ取れない。 「まあ、そうなんだけどさ」と俺は苦笑しアサヒスーパードライを注文した。茜が「私はイネディットで」と小さく手を上げる。 「ゲンちゃん、ペットショップのバイトしてた時の方が楽しそうだったよね」 「そりゃそうだよ。責任取らなくていいし楽だった」 「そうじゃなくてさ、生き物と触れ合う仕事してる方がいいんじゃないのって」
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